食中毒の原因となる細菌やウイルスにはサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌の他にノロウイルスやE型肝炎ウイルスなどがあります。例えばサルモネラ菌は加熱が不十分な肉や魚、卵などに付着していて食後6時間から48時間ほどで吐き気や腹痛などの症状が現れます。腸管出血性大腸菌にはO157やO111などがあり、食後12時間から60時間ほどで激しい腹痛や血が混ざった下痢などの症状が起こります。この細菌による食中毒は、症状が重くなると命に関わることもあるので注意しなければなりません。
細菌は気温が高くなる夏頃に繁殖しやすくなり、反対にウイルスは気温が低くなる冬頃に流行する傾向があります。食中毒の原因となる細菌やウイルスは基本的に熱に弱いので、徹底した温度管理を行うことが大切です。普段から全ての工程に温度計などを設置して衛生状態を監視し、温度管理を適切に行なっていれば危険な細菌やウイルスの繁殖を防ぐことができます。ただし細菌の中には黄色ブドウ球菌のように熱に強い毒素を作るタイプも存在するので、温度管理だけでなく危険物を混入させないための工夫が必要になります。
食品の製造と流通が国際的な規模で行われるようになっており、安全性を高めるため日本では2018年6月に食品衛生法が改正されました。改正法では食品を扱う全ての企業にHACCPという衛生管理手法の導入と運用が義務付けられています。この手法を導入すると微生物や異物、化学物質など危害要因の分析に基づいて原材料の仕入れから出荷までの全工程を対象とした衛生管理が行われます。HACCPによる総合的な衛生管理によって市場に流通する食品の安全性が向上しています。